漢検1級 四字熟語 頻出100選 第三部:故事成語・教養で差がつく20語

漢検1級合格を目指す方へ。このページでは、第一部・第二部と重複しない、故事性が高く教養としても重要な四字熟語を20語厳選して紹介します。これらの語彙は、難関である1級の試験で他の受験生と差をつけるための重要なカギとなります。

学習のポイント: 以下の四字熟語は、その由来となった故事を理解することで記憶に定着しやすく、漢検1級の読解問題などでも教養が試される重要なものばかりです。故事のあらすじも合わせて学習することをお勧めします。

故事成語・教養で差がつく20語

  1. 鼓腹撃壌(こふくげきじょう)
    意味:太平の世が続き、人々がのんびりと平和に暮らしている様子。
    故事:伝説上の堯(ぎょう)帝の時代、老人が腹を打ち(鼓腹)、地面を踏み鳴らし(撃壌)ながら歌い、政治を讃えていたという故事から。
  2. 鹿鳴之什(ろくめいのじゅう)
    意味:『詩経』の篇名。転じて、賓客を饗応する宴会の詩や、その宴そのものを指す。
    故事:『詩経』小雅の一篇「鹿鳴」など十篇を一まとめにしたもの。科挙の合格祝いの宴でも歌われた。
  3. 馮異大樹(ふういたいじゅ)
    意味:功績があってもそれを誇らず、控えめにしていることのたとえ。
    故事:『後漢書』。後漢の武将、馮異が、論功行賞の場ではいつも大樹の下に退いており、自らの功を誇らなかった故事から。
  4. 梓匠輪輿(ししょうりんよ)
    意味:優れた工匠。転じて、国家を治めるのに必要な人材。
    故事:『孟子』「梓匠輪輿は其の規矩(きく)を以て人に与(あた)うるも、巧みなるを以てすとまでは与えず」。大工や車作りが規矩(コンパスと定規)の使い方は教えても、巧みさまでは教えられないことから。
  5. 蛍雪之功(けいせつのこう)
    意味:苦労しながら勉学に励むこと。貧苦に負けず学問にはげむたとえ。
    故事:車胤(しゃいん)は蛍の光で、孫康(そんこう)は雪明かりで読書したという故事から。
  6. 韋編三絶(いへんさんぜつ)
    意味:何度も繰り返し熱心に書物を読むこと。
    故事:『史記』。孔子が『易経』を何度も読み、綴じ皮(韋編)が三度も切れたという故事から。
  7. 三豕渉河(さんししょうか)
    意味:文字の誤写や誤読のたとえ。
    故事:『呂氏春秋』。晋の史官が「己亥(きがい)」を「三豕(三匹の豚)」と読み誤ったという故事から。
  8. 卞和之泣(へんかのなき)
    意味:真価が認められず、不当な評価を受けることの嘆き。
    故事:『韓非子』。卞和が宝玉(和氏の璧)を王に献上するも、二度にわたり偽物と見なされ足を切られた。のちに玉であると認められて泣いた故事から。
  9. 牛涙馬勃(ごるいばぼつ)
    意味:つまらないもの、価値のないもの。また、一見つまらなくても役に立つもののたとえ。
    故事:韓愈の文章。牛の尿(牛涙)とキノコの一種(馬勃)は、取るに足らないものだが、薬として役立つことから。
  10. 蛍窓雪案(けいそうせつあん)
    意味:「蛍雪之功」と同義。苦学すること。
    故事:「蛍雪之功」の故事と同じ。車胤の蛍の窓(蛍窓)、孫康の雪の机(雪案)から。
  11. 商山四皓(しょうざんしこう)
    意味:世を避けて隠居している賢人や長老。
    故事:『史記』。秦末から漢初にかけて、商山に隠棲した四人の賢人(東園公、綺里季、夏黄公、甪里先生)のこと。
  12. 断機之戒(だんきのいましめ)
    意味:学問を途中でやめることへの戒め。
    故事:『列女伝』。孟子が学業を怠けて帰ると、母は機織りの梭(ひ)を折り、途中で止めた学問が無駄になることを戒めた故事から。
  13. 笑比河清(しょうひかせい)
    意味:非常に厳格で、めったに笑わないこと。
    故事:『宋史』。包拯(包公)が非常に厳格で、その笑顔は黄河が澄むよりも稀だと言われた故事から。
  14. 漆身呑炭(しっしんどんたん)
    意味:復讐の念に燃え、身をやつして機会をうかがうこと。
    故事:『戦国策』『史記』。豫譲(よじょう)が、漆で身体に腫れ物を作り炭を飲んで声を潰し、主君の仇討ちを企てた故事から。
  15. 蛇影杯弓(しゃえいはいきゅう)
    意味:必要以上に疑心暗鬼に陥ること。
    故事:『晋書』。杯の中の弓の影を蛇と思い込み、病になってしまった男の話。
  16. 病入膏肓(びょうにゅうこうこう)
    意味:病気が不治の状態になること。転じて、悪癖などが抜けきらない状態。
    故事:『春秋左氏伝』。晋の景公の病気が、薬の効かない膏(心臓の下)と肓(横隔膜の上)まで入り込んでいるという夢を見た故事から。
  17. 舟中敵国(しゅうちゅうてきこく)
    意味:身内や内部から敵が現れること。内部の裏切り。
    故事:『史記』。呉起が魏の武侯に「もし君徳を修めなければ、この舟中すら敵国となりうる」と諫めた故事。
  18. 鶏鳴狗盗(けいめいくとう)
    意味:取るに足らない末梢的な技能や、そのような技能を持つ者。
    故事:『史記』。孟嘗君が秦の国を脱出する際、鶏の鳴きまねの得意な食客が関所を開けさせ、狗(犬)のように物を盗むのが得意な食客が証拠の皮衣を盗んだ故事。
  19. 管鮑之交(かんぽうのまじわり)
    意味:互いに理解し合い、利害を超えた固い友情。
    故事:『史記』。管仲と鮑叔という二人の政治家の、一切のしこりがない深い信頼関係に基づく交友関係。
  20. 助桀為虐(じょけついぎゃく)
    意味:悪事の手助けをすること。悪人を助けて悪事を働くこと。
    故事:『史記』。桀(古代中国の暴君)のような悪人を助けて、虐げる行為をすることから。
総括: これらの四字熟語は、漢検1級の試験において読解問題や書き取り、意味問題など様々な形で出題される可能性があります。故事の背景と合わせて確実に覚え、合格を勝ち取りましょう。
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