漢字の変遷・歴史・起源

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漢字の起源

漢字(かんじ)は、古代中国に発祥を持つ文字で、中国語を表記するための伝統的な文字です。
中国から日本へ輸入され、その形態・機能を利用して日本語の表記にも使われています。

文字としての特徴は、意味の違いに応じて異なる字を使用するため、従来、表意文字(ideogram)に分類されてきました。しかし、実際には意味だけを表すとは言い難く、最近では1音節1形態素の構造を持つ中国語の単語を表すとする表語文字(logogram)に分類すべきとされます。

日本と同様に朝鮮や19世紀までのベトナムなどでは、中国から漢字を輸入して使用しました。
これらの漢字を使用する周辺諸国を包括して漢字文化圏と呼びます。
中国を除く漢字文化圏の諸国でも漢字体の文字である国字を各個独自に発明しています。

現在、漢字は、中国・台湾・日本・韓国・シンガポールなどで、文字表記のための手段として用いられています。
しかし近年の各国政府の政策で、漢字を簡略化したり使用の制限などを行なったりしたため、
現在では、これらの国で完全に文字体系を共有しているわけではありません。

日本では仮名、韓国ではハングルなど漢字以外の文字との併用も見られます。
ただし、韓国では、現在は漢字はあまり用いられていません。
また、北朝鮮やベトナムのように、漢字使用を止めた国もあります。
しかし、漢字は使わなくなっても漢字とともに流入した語彙が各言語の語種として大きな割合を占めています。



漢字の変遷<歴史>

漢字とはどんな歴史を辿ってきたのでしょうか?

甲骨文字<こうこつもじ>

 約3500年前?現存している最も古い漢字です。
亀の甲羅や牛の骨に書かれてあったので「甲骨文字」と名づけられました。
甲羅や骨は占いに使われていて、その占い結果を書きつけたものです。
文字の完成度が高いので、それ以前にも文字があったことは間違いないのですが、
今のところ確認されていません。何千年も腐らずに残る素材はあまり考えられないので、
甲羅や骨を削って記されてあったこの文字が、さかのぼる限界かもしれません。

金文<きんぶん>

 約3000年前?殷の国が滅び、周の国の時代になると、人々の活躍をたたえた内容を
青銅器に鋳込んだり刻んだりするようになりました。
金属に鋳込まれたり刻まれた字なので「金文」といいます。
金属に刻みつけるので直線が多くなっています。
もちろん竹や木や布にも文字は記されていたでしょうが、やはり素材として腐りやすいためでしょうか、
周代のものは発見されていません。

篆書<てんしょ>〜大篆・小篆

 約2500年前、周の時代が終わりを告げると、春秋戦国時代になりました。
孔子やその弟子たちが活躍した時代です。
この時代にはたくさんの記録が残されるようになりましたが、
その時代に使われた書体を「篆書(てんしょ)」といいます。

 戦国時代の争いで勝ち残った国は、「秦(しん)」という国でした。
秦の始皇帝は、度量衡・貨幣・車輪の幅などを中国全土で同じ規格単位に統一しました。
さらに、漢字の統一もおこないました。それが「篆書」を簡略化した「小篆(しょうてん)」です。
それまでの「篆書」のことを「大篆(たいてん)」と呼んで区別します。西暦100年頃になってから、
後漢の許慎によってこの小篆体、9353字を見出し字とする字典『説文解字』がつくられ、
漢字の「聖典」として小篆の規範体が確立されることになりました。

 この時代から石に刻まれた文字もたくさん残っていますので、
金文とあわせて「金石文」と呼んでいます。「篆書」は、書道展などでよく見かけますし
今でも、いわゆる個人の複雑なデザインの実印や
お札の「日本銀行総裁の印」「発券局長」の印の字として使われています。

隷書<れいしょ>

 約2000年前、漢という国が中国を支配するようになると、物事を細かくきちんと記録することが必要になってきました。
文字を毎日書かなければならない役人にとっては「篆書」は複雑で実用的ではなかったので、
簡略化して書きやすい書体が考案されました。
それが「隷書」です。読売・朝日・産経など新聞の題字で使われているものです。

楷書<かいしょ>

 約1800年前、後漢の時代になると、さらに簡略化がすすみました。
大きさをそろえて、角をつけて、一点一画を丁寧に書くものを作り上げました。
それが「楷書」で、現在の漢字の標準となっています。
読みやすく、正確に伝わる字体のため「楷書ではっきりとお書きください」という注意書きをよく見かけます。

行書<ぎょうしょ>

 約1800年前、「楷書」が「読みやすく、正確に」という基準で考案されたのと同時に、
それを速く、書きやすくするための字体も生まれました。「行書」といい、
「楷書」できちんと分けて書いていた線を続けたり、次の字につながりやすくするために変化させたものです。
「楷書」が基になっていて、その良さも失っていませんので
実用的な字体として、現在もっともよく使われています。
「行書」はひとつの文字にいくつもの形があり、書き手の個性を生みだして、文字を生きたものにしています。

草書<そうしょ>

 約1700年前、晋の時代になると字体をもっとくずした「草書」が生まれました。
「草書」は、「隷書」を早く書くために作られました。つまり、

「隷書」→「楷書」→「行書」→「草書」という流れではなく

1.「隷書」→「楷書」→「行書」  2.「隷書」→「草書」

という2つの流れがあるのです。
「隷書」から一挙に極限まで崩されていますので同じような崩し字であっても、
「行書」と「草書」で筆順が違うことが多いのはそのためです。
ただ、「行書」の最終段階で「草書」に到達するものもあります。
文字としてのわかりやすさよりも、「書く速さ」を優先した実用性を追求した字体ですが、
崩し方には法則がなく、バランスや筆づかいが大切な要素になっているため「芸術性」が認められることも多くあります。

明朝体<みんちょうたい>

 約1600年前、ワープロ、パソコンの標準書体になっていることが多い「明朝体」は、その呼び名の通り、明の時代に考案された字体です。

誰にでも複製ができる標準的な書体が求められて印刷専用書体としての「明朝体」が考案されました。
特徴は

  横線は細く真横に書く。
  縦線は横線に直角で太く書く。

明朝体の成立とは「楷書」における「書体=デザインの統一」です。
つまり、文字がくっきりする「見るため(見せるため)の文字」です。

 後の清の時代に『康煕字典』が作られました。
約42000字の字形が整理され、東アジア漢字文化圏における字形・書体上の規範となりました。
この書物も「明朝体」で刊行されています。

 日本では、中国大陸における簡化文字などの影響を受けながら、昭和時代に様々な新しい字形が創案されることとなりました。

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